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運送業と労働基準法について
一億総活躍社会の実現に向けての対策の1つである働き方改革の適用が、2024年に適用されます。2019年に適用された一般企業と違い、業務の特性を考慮して別の改正法が施工されることで、運送業の労働基準や環境が大きく変わることになります。
運送業は、他産業と比較して長時間労働であることや低賃金であることなどが原因で人手不足が著しい傾向にあります。特に大きな問題とされている「労働時間」についてフォーカスしていきましょう。
一般の労働時間は、法改正でどのように変わる?
労働基準法で定められている一般企業の労働時間は、1日8時間もしくは週40時間で、休日は毎週少なくとも1回とされています。これまでの限度基準告示による上限は、罰則による強制力がなく、特別条項を設けることで実質上限なく時間外労働させることが可能でしたが、改正後は36協定といわれる労使協定を締結し、所轄労働基準監督署⻑への届出を行うことが義務化されました。特別条項が適用された場合でも、時間外労働が年間720時間以内、時間外労働と休⽇労働の合計が⽉100時間未満など、上限を設けました。違反者には罰則が科される可能性もあります。
これらの時間外労働に関する改正は、2019年4月から大企業、2020年4月から中小企業に向けて施行されてるものです。
運送業(トラックドライバー)の労働時間の上限は?
一般企業とは異なり、運送業への改正法の適用は2024年3月31日まで猶予期間が与えられています。2024年4月からの時間外労働の上限が適用された場合、特別条項付き36協定を締結することにより、時間外労働の上限は960時間となります。
時間外労働と休日労働の月間の上限や、2~6カ月の平均労働時間については適用されない上、一般企業よりも長時間の労働が可能ではありますが、適用前から月間20時間程度の労働時間の削減が必要です。
トラックドライバーの労働時間の考え方
運送業に従事しているトラックドライバーの労働時間の考え方は、一般企業とは異なります。始業から就業までの労働時間と休憩時間(仮眠時間を含む)の合計が拘束時間となります。労働時間には、運転やトラックの整備、荷物の取り扱いなどの作業時間の他に、荷待ち時間も含まれています。
改正後は一日の拘束時間は基本的には13時間、延長しても16時間を上限としています。休息時間は、勤務終了後に連続8時間以上と定められているので、この基準に基づいた運行スケジュールを計算する必要があります。
荷待ち時間の記録義務
トラックドライバーの長時間労働の改善や荷待ち時間の実態の把握、、荷待ち時間を生じさせている荷主への勧告等の目的で、平成29年7月1日から荷待ち時間の記録の義務が施行されています。車両総重量8トン以上又は最大積載量5トン以上のトラックに乗務しているドライバーを対象に、集荷地点の到達日時や集荷地点での荷積み荷下ろしにかかった時間などを記録し、一年間保管する必要があります。
働き方を改善するには?
運送業における働き方改革への取り組み、対応はどのように進めていくべきでしょうか。3つの点から考えてみましょう。
現状把握
まずは、ドライバーの労働における現状や環境を、正確に把握することが大切です。主に社外で働くドライバーの勤務状況を知るためには、遠隔でコミュニケーションがとれるツールやドライブレコーダーなどを利用し、改善基準告示違反がないか確認する必要があります。
課題点を洗い出す
現状に違反が見当たらず、基準から逸脱していないとしても、実際に働くドライバーの声を聞くことが重要です。数字では明確にならない課題点を見つけて、自社だけでなく、荷主へのアクションを起こして双方の生産性や効率を模索していくことが結果につながります。
改善のための具体的な方法を考える
改正労働基準法の厳守をベースとしたプランを考え、実行していきましょう。運行管理者や点呼者だけでなく、ドライバー自身も時間外労働に上限があることを意識することで、超過労働を防いだり、人手不足の解消のために、ダブルワークや定年の引き上げなど雇用条件の見直しといった具体的な方法を実行していくのがポイントです。
労働時間を正す
長時間労働は仕事に対するモチベーションが下がります。酷くなると、心身の疾患の原因となったり、さらには過労死にまでつながったりしてしまうケースもあります。近年の働き方改革やテレワークの導入により、日本社会全体でみれば長時間労働は改善されつつあります。しかし運送業界ではいまだに長時間労働が横行しているようです。2024年4月からはこれまでの猶予期間であった5年間が満了し、時間外労働の上限を超えた場合、会社に対して罰則が課せられるようになります。しかも、トラックドライバーのみならず運行管理者や点呼担当者などの内勤者も対象となります。長時間労働は企業のイメージが損なわれ、他社との取引や人材確保にまで影響が及ぶため、早めの対応が求められています。
同一労働同一賃金の意識
これまで日本の労働慣行には、正規雇用と非正規雇用との間で、待遇の差が存在していました。正規と非正規とは同じような仕事をしているにもかかわらず、給与やボーナス、手当、福利厚生などにおいて正規社員の待遇が優遇されすぎているのではないか、という疑問が現場ではクローズアップされています。それを受けて、厚生労働省では同一労働同一賃金の原則が適用されるべきとしています。さらに例外的に存在する「不合理ではない待遇の差」はどのようなものであるか、ガイドラインを設けて説明しています。労働者が働きやすい環境を作るうえでも重要なポイントなので、積極的な取り組みが求められています。
人手不足の解消
運送業界では2010年代ごろから慢性的なドライバー不足が続いていると言われています。少子高齢化のため、大型免許を持っている人がそもそも少なくなっていることや、他の職種に比べて長時間労働の印象が強いことなどが理由のようです。まずは職場環境を整え、労働生産性を促進するためのDX化など時代に即した組織つくりが求められます。そのうえで働き手を確保するために、長時間労働を解消することや、ダブルワークや定年の引き上げなどの柔軟な施策が必要です。
運送業・物流業界と2024年問題
運送業と物流業界は2024年問題への対策が急務となっています。2024年4月から、休日出勤は含まれない・時間外労働は年間960時間、罰則付き上限規制の適用などの規制が課されます。ここでは、対策として労働生産性の向上、運送業者の経営改善、適正取引の推進、多様な人材の確保・育成について紹介しています。
運送業の労働基準法違反事例と、対策のポイント
運送業の人材不足は非常に深刻で、違法な長時間・過重労働が常態化していると言われています。国を挙げて長時間労働防止に向けた取り組みがされている一方で、運送会社の中には、「固定残業代制」や「事業場外労働でのみなし労働時間制」を悪用し、残業代が支払わず、労働基準監督署からの調査や是正勧告が出されるケースも増えています。ここでは運送業の労働基準法違反事例と、対策のポイントについてしっかり確認しておきたいと思います。
ホワイト物流推進運動とは
商品を安全かつ確実に運ぶことは、国民生活や企業活動において重要なインフラです。そのような運送業界を安定的に成長させていくための活動として「ホワイト物流推進運動」が策定されています。この運動のポイントは、①生産性の高い物流、②働き方改革の実現、の2つを両立させることです。そのために荷主企業と運送企業が理解・協力し合う体制が求められています。
働きやすい職場認証制度とは
国土交通省と厚生労働省は運送業界の人材不足解消を目的に、「働きやすい職場認証制度」を制定しました。働きやすい職場認証制度には一つ星、二つ星、三つ星(※2023年より発足)の3つのランクがあり、それぞれ満たさなくてはならない基準が異なります。この記事では、働きやすい職場認証制度について詳しく解説しているので、気になる方はぜひ見てみてください。
運送業界の課題「長時間労働」のリスクとは
過労死や労働災害など、労働者の健康被害の原因となる長時間労働。長時間労働には健康面だけでなく、残業代が支払われないなど、金銭面においても問題があります。給与を巡った裁判が起きており、支払われていなかった残業代を労働者が勝ち取っています。労働者が長時間労働を希望した場合も含め、長時間労働に伴うリスクについて詳しくまとめました。
インボイス制度の影響
インボイス制度が適用されると免税事業者はインボイスを交付できなくなるため、運送業者の中でも特に免税事業者が受ける影響は大きいです。仕入税額控除のハードルが上がり、仕入れる側としても取引先を見直す必要が出てきます。
ここではインボイス制度の導入により運送業界が受ける影響について詳しくまとめました。インボイス制度の対象などについても分かるので、ぜひ参考にしてください。
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