物流2026年問題とは？特定荷主が始めるべき4つのこと

2026年4月、物流業界に大きな転機が訪れます。施行されるのは「改正物流総合効率化法」。これにより、一定規模以上の荷主企業（特定荷主）には、新たな義務と体制整備が求められるようになります。ドライバーの長時間労働が焦点だった「2024年問題」とは異なり、今回の矛先は荷主側。物流現場の効率化だけでなく、CLO（物流統括管理者）の選任や中長期計画の策定など、経営レベルでの対応が不可欠となります。

本記事では、「物流2026年問題」と呼ばれるこの法制度の全体像を整理し、企業が2025年中に準備すべき具体的アクションや、DXを活用した効率化のポイントをわかりやすく解説します。制度対応に留まらず、自社のサプライチェーン全体を見直すきっかけとして、ぜひご活用ください。

物流2026年問題とは一体なに？

2024年問題との違い：「働き方改革」と「荷主責任」の分離

「2024年問題」とは、トラックドライバーに対する時間外労働の上限規制（年間960時間）が導入されたことで生じる問題を指し、主に運送事業者側の課題でした。これに対し「2026年問題」では、荷主企業自身が物流業務の当事者として義務を負うという点に決定的な違いがあります。

つまり、これまで運送業者任せだった「荷待ち」「荷役」や「納品時間の指定」などに、荷主自身が責任を持つ時代が始まるのです。

特定荷主の定義とは？企業の3,000社超が該当見込み

改正法では、一定規模以上の荷主企業が「特定事業者（特定荷主）」に指定される予定です。現在の素案では、年間貨物取扱量が9万トン以上の企業が対象となっており、全国で約3,200社（※）が該当すると見込まれています。

この「特定荷主」には、CLOの選任や中長期計画の提出などが義務化され、対応が不十分な場合には、国による指導・勧告・罰則の対象となることが明記されています。

企業に求められる新たな義務とリスクを整理

2026年4月より段階的に施行される改正物流総合効率化法では、「特定荷主」に該当する企業に対し、法的義務として対応すべき3つの柱が設けられています。これまでの“努力義務”の段階から一歩進み、実行責任が問われるフェーズに突入することになります。

1. CLO（物流統括管理者）の選任義務

まず注目すべきは、各特定荷主に対してCLO（Chief Logistics Officer）＝物流統括管理者の選任が義務化される点です。CLOは、企業の物流効率化施策を全社横断的に推進するリーダー的存在であり、単なる現場管理者ではありません。財務・IT・サプライチェーン戦略に通じた人材が期待されており、従来の物流部門だけでは人材要件を満たせないケースも想定されます。

2. 中長期計画の策定・提出・定期報告

特定荷主には、物流効率化に関する中長期計画の策定と定期的な報告が義務づけられます。これは、国が定める「判断基準」に即したものであり、荷待ち・荷役時間、積載効率などの定量目標を盛り込む必要があります。

計画書の内容は、国によるモニタリングや、評価・指導の対象にもなるため、単なる形式的な提出では不十分です。

3. 未対応企業が直面するリスク

義務を怠った場合には、以下のような行政処分やレピュテーションリスクが現実となります。

• 国による勧告・命令・実名公表
• 発荷主／着荷主との取引関係悪化や見直し
• ESG投資・サステナビリティ評価への悪影響

特に、CLO未選任や計画未提出といった「制度未対応」が、物流業務全体の信頼性低下につながる可能性があるため、2025年中の準備が必須とされています。

【2025年中】に準備すべき4つの具体アクション

2026年からの義務化に向け、特定荷主が2025年中に実施すべき準備は以下の4点に集約されます。

• 荷待ち・荷役時間の可視化
• 積載率・貨物重量の現状把握
• 委託先との連携強化とヒアリング
• CLO人材の選定と配置

物流2026年問題において最重要とされるのが、2025年中にどこまで準備を進められるかです。特定荷主に該当する企業にとっては、物流体制全体の「見える化」と「再設計」が求められ、現場と経営の両面からのアプローチが必要です。荷待ち・荷役時間の可視化は最初のステップ。自社倉庫や物流拠点での待機・作業時間を正確に把握・記録する仕組みが不可欠です。積載率や貨物重量の現状把握も重要で、横持ちや倉庫内移送も対象となります。物流業者との連携強化によって、共通の改善目標を明確にし、現場協議を重ねていく必要があります。CLOの選定では、DX・財務・戦略感覚を備えた全社横断型の人材配置が求められます。

2026年以降を見据えた“攻め”の物流戦略とは？

制度対応の「守り」だけでは、2026年問題は乗り越えられません。むしろ、変革のタイミングと捉えて物流体制を再設計し、経営競争力の源泉へと昇華させる“攻め”の視点が不可欠です。以下では、今後注目すべき3つの戦略領域を紹介します。

積載効率の最大化に向けたネットワーク再構築

積載効率の向上は、物流DXの第一歩です。モーダルシフトを活用し、幹線輸送を鉄道や内航船へ切り替えることで、トラック稼働の偏在やドライバー不足への対応が期待できます。加えて、共同配送や納品タイミングの集約により、配送便の重複やアイドリング時間を削減。発荷主・着荷主を横断するネットワーク再構築が必要です。

先端技術による物流プロセスの革新

自動運転車、ドローン配送、倉庫内ロボティクスなど、新技術の導入が進んでいます。こうした技術は人手不足の解消に直結するだけでなく、誤配送や事故リスクの低減、業務の標準化にも貢献します。特に2025年中にPoCを実施し、2026年以降の本格展開に備える動きが各地で活発化しています。

サプライチェーン全体の最適化とサステナブル化

単独最適から全体最適へ。これからの物流戦略では、仕入先・販売先・物流パートナーを含めたサプライチェーン全体での最適化が不可欠です。調達・生産・販売を一貫した視点で見直し、輸送距離の短縮や中間拠点の集約など、構造的な改革に挑む必要があります。ESG対応や脱炭素経営を見据えた再構築が、企業の持続的成長を左右します。

まとめ：対応の遅れは命取り！

荷待ち時間の現状把握は、すべての対策の起点です。物流業務の構造改革は待ったなし。特定荷主への指定を受けてから動くのでは遅く、今この時点での準備が将来の事業継続に直結します。物流2026年問題は単なる制度対応ではなく、企業の競争力を再定義する大きな転換点です。

当サイトでは、CLO対応や荷役可視化をはじめとした運送業システムの選定・導入をサポートしています。今こそ、最適なツールへの切り替えを通じて、物流改革をチャンスに変えていきましょう。

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